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この漫画が面白い2 普通に傑作編

この漫画が面白いその2。

今回は普通に傑作な作品を6つあげてみた。ジャンルモノは好き嫌いがあって、楽しめる人とそうでない人がいるってことは(理解したくないが)わかるっちゃあわかる。でも、傑作というのは好き嫌いに関係なく傑作であり、そういう作品を楽しめない人というのは人間的に何かしら欠落していると思う。
6つのうち、女性作家によるものが4つ、男性によるものが2つだった。女性作家が描くものは男性作家のそれとはなんか違うんだよなあ。

かくかくしかじか東村アキコ

自分は絵がうまい。本気でうぬぼれていた林明子(高3)は竹刀を持った絵画教師・日高先生に鍛えられ、絵画を一から学ぶ。作者の実体験を元にしたマンガ。

マンガ大賞も取ったので有名なこのマンガ、最近完結した。これ、ほんとーに思い出を話しただけのマンガなんだよね。でもそれがあまりに特殊な思い出なので、それだけでマンガ大賞とれる、それくらいすごい。元気と愛情の塊みたいなスーパーな人間、日高先生とその恩に生きている間には報えなかった(と思っている)作者の在りし日をつらつらと描いていてただただ泣ける。


この世界の片隅にこうの史代

戦時中に生きる主人公、すずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑う。しかし、一日一日を確かに健気に生きていく…。上下巻

夕凪の街 桜の国』で大ブレイクしたこうの史代さんの作品。ちょっと前のだけど、これもすごいいい作品なのでリストに入れた。こういう、普通のリアルな日々を丁寧に描くマンガって実はすごい希少なんだけど、その中でも戦時中のものってのはこれしか読んだことがない。普通に人生を生きている人の姿の味わいというのがひしひしと伝わってくる。これも漫画史に残る傑作だと思う。
絵柄も流行りじゃないのにこれだけ支持されるこうの史代さんは、ちょっと特殊な才能の持ち主だと思う。この人は「こうの史代」マンガという唯一無二のジャンルを築いていくような気がする。



聲の形大今良時

小学生の時、石田将也は耳の聞こえない転校生・西宮硝子をいじめ、彼女は転校していった。そして、将也はひどいじめっ子としてボッチになり、そのまま高校生になった。幾年の時を経て、将也は もう一度、硝子に会うのだが…。京アニで映画化決定。

2013年に読み切りが載った時点から話題だったこの作品も最近完結した。とにかく絵がうまいので、ちゃんと話せない硝子の微妙な表情なんかがよくかけていて説得力があるし、女の子もみんなかわいい。主人公視点の語りに狭めて話をすすめているのもいい味を出している。いや、そういうことよりも、今まで、昔いじめっ子だった人が主人公のマンガって読んだことなかったんだよな。で、いきなりこのテーマの金字塔というか、今後絶対超えることができないものを出してきた。なんなのこの才能。
登場人物は多いが、基本主人公視点なのでみんな本当は何を考えているのかわからない。でも、最後の方に少しずつ本性がでてくる。それがすごい面白い。はじめは(悪く言えば)変な設定のラブコメだったのが、一気にシリアスな思春期ものになった。この作者、正義ヅラした普通の人キライで、どこか歪んだ人間が好きなんだよね。そう、ワタシもそういう人が好き。作者はきっと美人だと思ったら、実際すごい美人だった。硝子みたいな可愛くて心のキレイな存在描けるのは美人だけなんだよなあ。あ、ワタシのお気に入りはその妹の中学生の方な。

↑作者 ペンネームは男性っぽいが、作品読めば女性ってのはすぐ分かる。この人大作家になるよ


僕だけがいない街三部けい

青年漫画家の藤沼には時間を巻き戻らせる能力があり、不意に発動することがあった。彼には、子ども時代、同級生の失踪事件が相次いだことがあり、その事件について思い出させることが最近いくつかあった。ある日の事件をきっかけに彼は小学生時代に戻り…

荒木飛呂彦の助手だったという作者の傑作。これは、一つ一つのページを息を呑むような気持ちでめくって読んだ。それくらい緊迫感がある話。語り方も面白いし、ストーリーの見せ方もとんでもなくうまい。ネタバレ怖いからあんまり話せないけど…。このマンガは死ぬほど好きで好きすぎて生きているのが辛い。いま六巻まで出てて、犯人がようやくわかったところ。


それでも町は廻っている石黒正数

大田区の下町・丸子で育った女子高生、嵐山歩鳥を主人公に、彼女の周りで起きる日常の出来事を中心に描いてゆく日常コメディー。シャフトによりアニメ化もされた。

いま14巻まで出ているこれは息の長いシリーズ。日常が舞台つってもリアルなそれではなくて、漫画的なそれ。どことなく昔のマンガの雰囲気を持ちつつも、ギミックは新鮮で飽きない。というか、巻を重ねるにつれて面白くなってきている。話の時系列がかなり違っているのに説明がなかったり、別の回でちょろっとでてきたものが今回のキーアイテムになっていたりと、ハマり要素がある。アニメ見ていいやと思った人も、漫画版は別物なので読むべき。


海街diary吉田秋生

鎌倉で暮らす三姉妹の元に、自分たちが幼い頃に離婚して家を出て行った父の訃報が届いた。長女・幸の頼みで葬式に出るために山形へ赴いた佳乃と千佳は、そこで年齢の割にしっかりしている中学1年生の異母妹・すずと初めて出会う。すずを引き取った三姉妹は四姉妹となり、鎌倉での生活を続けていく…

マンガ大賞をとって映画化もされた言わずもがなの名作。吉田秋生は80年代にブレイクした大御所レベルの少女マンガ家だし、ガチで大好きな作品も多いのだが、BANANA FISH』みたいな愚作を出したりもしていた。が、この海街diary』は数人の登場人物の心の襞が細かくかつ重層的に描かれていて、漫画家として一段レベルアップしたかのような感じ。この作品で吉田秋生大島弓子山岸凉子といった「伝説級」の少女漫画家に迫った。
いや違う。偉そうなこと言ってしまった。ほんとは、ワタシは吉田秋生BANANA FISH』なんかより少なくとも2つ上の作品を描く作家だと思っていたのが、3つ上の作品を出してきてくれたので、昔からのファンにとっては嬉しいかぎりというだけだ。
鎌倉の風情もうまく織り込まれていて、登場人物も中学生から社会人まで幅があり、それこそかつての少女漫画のような文学的な薫りがする。今これだけのものを描けるのは吉田秋生だけだと思う。


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というわけで、比較的最近の作品をあげてみた。どれもマンガ好きなら絶対知っているはずのものばっかりだけど、やっぱりいいものはいい。というか、リストにしてみて、これ以上の作品をほかに思いつかないとまで感じた。それくらいここにあげた作品はどれも抜けている。
きっと、マンガガチで好きな人100人にいま熱い傑作を選ばせて、そのうちよくあがった作品名を10個までしぼると、そのうち5つは上にあげた6つのうち5つが占めていると思う。それくらいこれは定番なリストだと思うので、「普通に傑作」というタイトルにした。