ビタミンCのブログ

ブロマガから移ってきました

一日一枚(嘘)アルバム-001 The Velvet Underground「The Velvet Underground」1969

かわぐちかいじに『僕はビートルズ』というマンガがある。ビートルズコピーバンドやってた連中が61年にタイムスリップして、まだ存在しないビートルズをパクって大フィーバーを起こすという話だ。これけっこう面白いんだけど、ビートルズが音楽や文化、ファッションや思想まで莫大な影響を与えたことを知っていないと、意味がわからないと思う。偉大なビートルズの曲だけパクってみても、本物じゃないと影響は限定的だし、実際に全部成り代わるのなんて不可能だということが前提としてある話だった。

で、ビートルズが偉大だということに異論はないし、むしろあのマンガでは全然語り足りていない。この立場を前提にした上で、音楽的な影響に関してだけなら、ビートルズ以上かもしれないバンドが60年代にはいた。え? そんな馬鹿な? え? ストーンズでしょ? というあなた。はい、あなたは洋楽初心者か洋楽についてはほぼ無知だということができる。なぜなら、真の音楽好きでThe Velvet Undergroundの存在を知らないというのはありえないからだ。まあでも、バナナアルバムのジャケットくらいは見たことあるよね?


20年くらい前までなら、The Velvet Undergroundはリアルタイムではほぼ無名だったけれど、ミュージシャンズ・ミュージシャンとしてそのあと伝説になったバンド、程度の紹介だった。これだけでもまあ十分すごいのだが、2000年代以降、ヴェルヴェッツはオルタナ系の元祖と言われるようになり、前世紀にも大きな影響を与えたが、現在でも影響を受けていないバンドは皆無、みたいな評価を受けるようになった。現在進行形の存在感としては、ビートルズより上かもしれない、そんな感じ。

ほんとか嘘か理解するには、The Velvet Undergroundの全アルバムと、現代までの洋楽両方幅広く聞くしかない。が、ワタシの感触では批評家によるヴェルヴェッツのこの持ち上げ方はしごく妥当だと思う。一作目でニコをヴォーカルにけだるくポップにでたあと、二作目はジョン・ケイルの前衛音楽全開、三作目でルー・リードのミニマルで洗練されたロック全開と、バリエーションも豊か。音楽性だけとってみても、ビートルズに匹敵するのは間違いない。メンバーもぶっ飛んでカッコイイ。



ワタシのオススメは三作目のセルフタイトルアルバム。ジャケもいいし、アコースティックなアレンジがよかったり、スターリング・モリソンのギターがよかったりでスルメ。これ聞くと、1960年代にもうこういう世界が開けていたことへの驚きと、とにかくなんかしなければというような焦りを感じてしまう。お気に入りは、B面一曲目の"Beginning to See the Light"。