ビタミンCのブログ

ブロマガから移ってきました

一日一枚アルバム 002 Kanye West 『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』

カニエ・ウェストが2010年に出した『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』、これは人生で出会ったアルバムのなかでも特別な作品だ。つまり、個人的には、ヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』やアーケイド・ファイアの『Funeral』、パンダ・ベアの『Person Pitch』なんかと肩を並べるような最高級の傑作だ。


アマゾンのレビューを見ると、音楽的にエポックメイキング的な作品とか書いてあるので、聞いたことのないようなサウンドを期待してしまうが、2010年時点においてもサウンド的にはそれほど目新しい物はなかった。すでにカニエは『College Dropout』だの『Late Registration』だので新しいサウンドの境地をヒップホップの世界に切り開いており、『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』はそれらの延長線上にある。この作品のすごさは、音の新しさにあるのではなく、とことんまで突き詰めた誇大妄想的な歌詞に音をシンクロさせ、カニエ的地獄とでも言うべき異次元の世界を私たちに体感させるところにある。意味不明だって? ではこのPVを見てみてほしい。

この悪趣味と誇大妄想。PVからしてこれだからね。よくわかっていらっしゃる。コメントで誰かが書いてたけど、誇大妄想的自己肯定からの一転して自殺、これがカニエの世界。

このアルバムはとにかく曲のできが良い。しかも、聞き疲れないように適度にバランスよく曲が配置されてる。

All Of The Lightsはそんなかでもピークの一曲。Rihannaのセクシーな衣装見ないと損するぜ。

冒頭のヴァイオリンからはじまって、打ち込みのボンボン言うのでドラムみたいな感じ出してるてたり、とにかくいろんな音の要素をすごいおしゃれにまとめている。こんなセンスある曲作れる人間ほかにおるか?

あとこのアルバム、歌詞がいい。ちゃんと人の心情をリリカルの歌ってるんだけど、取り上げる心情の部分が普通じゃない。心がすっごいやわくなる微妙な状況のときの気持ちをきれいにすくってくれるって感じ。え、意味不明だって? じゃあRunaway聞いてみてよ。

これ一曲聞くだけでカニエの才能がわかると思う。そんくらいすごい曲だこれ。PVも変だけど最高。

Blame Gameもそれ系統の曲。ピアノ基調のサウンドにやさしい歌い方で、シンプルな歌詞にのせるのはちょっとひねくれたラブソング。いや、でもある意味すごい素直。詳しくは以下ビデオ参照。PVはなかったので、歌詞付きの選んだ。

ラブソングなんて全パターン歌われたと思ってたのに、まだまだ新しいの出てくるんだなあ。これには脱帽した。

そういやこのアルバム、Pitchforkが2010年のベストアルバムにあげていた。年末に出た時のレビュの翻訳がなんとここで読める。
音楽的には『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』は、『College Dropout』のゴキゲンなサンプリングと『Late Registration』のシームレスなバロック調の演奏を、『Graduation』で置き去りにしたヒップホップのマキシマリストとしての才能で「焼き増し」したものである。結果的にこのレコードは彼の圧倒的な才能と分裂症的なペルソナが噴出した豪華絢爛でベストアルバムのような仕上がりとなった。彼自身が一般レベルまで定着させた「ナードなスーパースターによるヒップホップ」というスタイルをゴミ箱にぶち込んで、彼は前人未到の境地にまで足を踏み入れた。
まあ欧米のレビューってのは自分の言いたいこと言うために適当なこと書くことも多いんだけど、これは正しい。1.アルバムのサウンドカニエのペルソナが爆発的にもりこまれていること。2.その豪華なサウンドがある意味前人未到なものであること。これだ。だいたい、一曲目からして、もっと上に連いけるかい?、って問いかけから始まるんだもん。

このアルバム、先端の音作りを使いながらも、どっちかというと音数は少なくて、全体的にとてもパーソナルな心情の告白というようにも聞こえる。まあそれは今までのアーティストもやってきたことではあるんだけど、カニエのペルソナの独自性がこのアルバムを特異なものにしているのは間違いない。

PVのタイトル見ればわかるけど、このアルバムではかなりの数の人とコラボして作っている。とくにこの「モンスター」はJay-Z, Nicki Minaj, Rick Ross に Justin VernonがPVでも出ていて見てて楽しい。でも、ゲストがどんなにいても、どれも全部カニエの曲になってる。

次は「ロストインワールド」。これでニコ動にあるこのアルバムのPVは全部網羅したかな。

うおおおこれは名曲だなあ。ファルセットで歌ってる曲ってもともと好きなんだけど、これは格別だわ。掛け声みたいなのが途中ではいるのもカッコイイ。PV職人も一流。ここで出てくるJustin VernonはBon Iverのボーカルな

アルバム全体の話だが、歌詞は思春期んときに聞いてたらすんごい影響受けただろうなって思わせる。一言一言が重いし、直に響く、そんな感じ。

とにかく、ほぼすべての曲が神レベルで、全体としても最高。比較的シンプルなサウンドなのに、組み合わせがとにかくカッコイイんだよなあ。一時間超えるアルバムなのに、最後の曲が流れると、え、もう終わるの?と思ってしまう。これな。

音楽業界でも2010年代はこのアルバムを中心に動いている、みたいなことをピッチフォークでも書いていた。日本であんまり聞かれてないのは悲しいが…

ちなみに、RunawayにはフルばーじょンPVが別にある。これね。